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歩実 9歳
「ただいま〜。」
「歩実。ちょっと来なさい。」
「お母さん、どうしたの?」
「今日、学校の先生から聞いたわ。給食、また人参と牛乳を残したそうじゃない。」
「だって、おいしくないもん。」
「あのね歩実。家でも、栄養バランスには気をつけて食べなさいって、いつも言ってるでしょ?」
「家ではしょうがなく食べてるけど…やっぱり、あんまり好きじゃないもん…」
「私たちはね、別に歩実が嫌いで言ってるんじゃないの。歩実に、しっかり健康的に育って欲しいから言ってるの。」
「歩実は元気だよ!他の物も食べてるし!」
「そうじゃないの。ちゃんと色んな物を食べることが、病気にならない健康な身体には絶対必要なの。もし、歩実がこの言いつけを守っていい子にしていたら、大人になった時、きっと素敵なお城で可愛いドレスを着られるわよ。」
「お城!ドレス!フリルある?王子様いる?」
「ええ。白いドレスに、お花柄のレースのフリル。きっと、歩実にピッタリの、かっこいい王子様もいるわよ。」
「食べる!歩実、人参も、牛乳も、全部食べる!」
「それでこそ、私たちの歩実よ。言いつけを守れて、とってもとってもいい子ね。」
「うん!歩実、いい子になる!」
それが本当かなんて
正直どうでも良かった。
ただ
お母さんの喜ぶ顔が見たかった。
お母さんの言うことに
間違いはないと信じていた。
だって私は
こんなに愛されているのだから。
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