大きな魔法使いと小さな魔法使い

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 ここだけの話だが、大魔法使いテルサンは、この世界の救世主である。  昔、五十年にわたって戦争が続いた時代があった。その戦争はこの世界のほぼほぼ全土を巻き込み、世界中の人々が死の恐怖に怯え、考えつく限りの武器をふりかざした。  人類史上類を見ない規模の戦争だった。これを鎮めたのが実は、大魔法使いテルサンだった。あくまでも、ここだけの話。  どのように鎮めたのかだなんて、野暮な質問はよしてほしい。何せ、大魔法使いのやることである。ぱっとしてくるっとしてふーっとしたら、あっという間に人々が戦う気をなくしたのだ。テルサンの魔法は、それほどに強力だった。  しかし、大魔法使いとはいえ、生きとし生けるもの全ての存在に与えられた「寿命」というものがある。テルサンも例外ではなかった。ある時、幼かった私が椅子から転げ落ちるのを救えなかったテルサンは、 「仕方ないね」  とそう言って、突然大魔法使いをやめることに決めたのだった。  そう。大魔法使いテルサンは、実は私の祖母なのである。  テルサンは大魔法使いというだけでなく、平穏な生活を愛するふつうのおばあさんでもあった。
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