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橋を越えて少し馬を進めれば集落が見えて来た。その辺りでわたしは馬を降り、手綱を引く事にする。良くも悪くもわたしの顔は売れている。生まれ故郷の領内ならばなおさらだ。
制服は避けてきたとは言え、セルシア騎士団の長官がやって来たとなれば一体何事かと村人に警戒させてしまいかねない。
わたしは領民が好きだ。だから彼らに不安を与えたくはないし、身内の一人として受け入れてもらいたい。
馬上から見下ろす様な事になってはどうしても威圧感が出てしまう。わたしはそれを避けたかったのだ。
レイティスを引き、まだ開かれていた朝市に近づいて行く。見かける人々の姿は都会に比べ慎ましくはあるが、かと言ってだらしなさも感じさせない実用的な服装に見えた。それは飾らない気質の人々であるのを感じさせる。
社交界に跋扈する出世ばかりに目が行く張りぼて連中よりもよほど安心する。レフレヴィー領にこういう人々がいることがわたしは嬉しい。
「ああっ?! こ これは!サンドラ様! みんな!サンドラ様だ!サンドラ様がいらした!! 」
中の一人がわたしに気付き、慌てて帽子を取ると声を上げる。
「ああっ これはこれはサンドラ様! ようこそお越し下さいました」
「サンドラ様」
「サンドラ様だ! 」
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