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私の言いたい事を汲みとってくれたのでしょうか。サッチンの弱気な瞳がやや生気を取り戻しました。
私が小さく頷くとサッチンもそうして答えてくれました。幸いネネネに注意が行っていたサンドラ様にはサッチンの醜態がばれずにいた様です。
サッチンは一度自分の両頬を両手で挟んで、そして放すと同時に顔を上げました。がんばって、サッチン。
私はサッチンから離れてサンドラ様の側に向かいました。
「妹がご迷惑を。ネネネ、そろそろ降りなさい」
「構わない。王都でも小さな子たちと触れ合う機会はあってな。それに子供は国の宝だからな」
孤児院を慰問する貴族がいらっしゃる事は聞きますが、膝の上までお許しになる方はそうそう居ないでしょう。現王族の方は孤児とも積極的にお会いになると聞いていますが、親しい交りのあるサンドラ様もまたそう言ったお心をお持ちの様です。でも、サッチンの前ではやめて頂きたいのです。
「おねーさんやさしい。 おねーさんだいすきー! 」
ネネネの笑顔はずるいと思うのです。幼子の笑顔は大人の心を簡単に打ち抜くのです。
危機感を感じたのかサッチンが進み出ました。その顔に『やるぞ!』が出てます。サッチンはとっておきをやるつもりです。
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