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『会いたいよ、ハルくん』
すぐに既読になってから。
『オレもユカに会いたい』
その返事に顔がニヤけてしまう。
明日になったら会社で会えるのに、お互い別々の家に帰るのが寂しい。
今頃、奥様と一緒にいるのかな、なんて。
自分だって一馬といるくせに……。
でも、もっと早く出会えていたら、とお互いに感じてる。
一馬に出逢う前に、奥様に出逢う前に。
そしたら間違うことなくハルくんと手を取り合っていたはず、絶対に。
左手の薬指に窮屈にはまった指輪をはずすと少しだけホッとする。
自由になりたい、ハルくんの側にいたい。
『お盆休みに、夫が旅行の計画立ててた。この間一緒に行った旅館予約されててマジ焦った』
『マジで!? 大丈夫?』
『バレてはいないみたい』
バレてたらあんな風に私の体のことを心配したりしないだろう。
『うちもそういえば旅行の予約入れられてたな』
『ええっ!? ハルくん行くの?』
『行くしかないでしょ、一応まだ夫婦だし。ユカだって行くんでしょ?』
『そうだけどお……』
自分は良くてハルくんがダメなんて言えないけど。
イヤだなって思っちゃうんだもん。
『秋の連休は、ユカと一緒がいいな。遠出しよう?』
『本当に⁉ わー、どこ行こうかな、どこにしよう?』
『気が早いなあ』
きっと冬が来る頃には、ハルくんは奥様と別れてくれるはずだ。
そうして春になる頃には、今度は私が一馬と。
「由香~? 風呂入っちゃいなよ」
「あ、うん。ありがとう」
あわててスマホをポケットに入れて笑顔を取り繕う。
慰謝料とかそういう面倒事だけは避けたいから。
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