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「白浜さん…さっきイラッとしました? αって話になった辺りから…」
帰り道、ふとそんなことを戸川に訊ねられた俺は散りはじめた桜を見上げて苦く笑んでいた。
俺と戸川だけが同じ方向の帰りでそれは本当に俺にとって有り難いことだった。
「…俺さ…αってことがコンプレックスなんだよ。昔から…」
俺は素直にそう答えて俺にしては重く深い溜め息を吐き出していた。
「…え? αって…ことが?」
そう訊ね返してきた戸川は不思議そうにしていた。
いや、それが普通の反応だ。
この世界では…。
この世界には男女の性の他にα、β、Ωと言う特性の性…第二の性が存在する。
αは生まれながらに容姿端麗で能力、知能共に優れた類い稀なリーダー格とされており、優等種と言われている。
βは人口の約70%以上を占めており、言うならば『普通』の人間だ。
そして、Ω…。
Ωは男性でも妊娠可能な希少種でαを産める個体としては重んじられるのだが特異性が強いために劣等種とされ世間でのその扱いは決してよくない。
それがこの世界…。
そして、俺は…。
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