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「変だろ? αの性がコンプレックスなんて…。けど…コンプレックスなんだ。俺はαだけど普通のαほど何かができるわけじゃない…」
俺はそう言っていつものように笑っていた。
そうしないと戸川を困らせると思って…。
だけれど、実際は…。
「いいんじゃないですか? コンプレックスなんて人それぞれだし。なんか…スッキリしました。それ聞けて」
そう言って笑った戸川が寝起きに見た朝陽のように眩しかった。
そして、その奔放さがふと誰かと重なった…。
それはツバメが目の前を通り過ぎたようなそんな刹那のことだったけれど、それは確かに…濃く…。
だからふと、問い掛けてみた。
『お前ならどう思う?』と…。
その問い掛けの答えは相変わらず返ってこなかった…。
「うっわぁ~…」
そんな声が真横から上がった。
それに俺は『うん?』と返事を返し、その返ってこない返事を待つのをやめていた。
「…あそこ…あそこに居るの…絶対αでしょ?」
そう言って満面に苦い笑みを浮かべ、指を差した戸川の指先を辿った俺は息を止められていた。
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