歯車。

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~・~・~・~ 「…白浜さん…大丈夫ですか?」 そう声を掛けてきてくれた戸川は本当にごめんとしか言えないくらいに引いていた。 それは無理もないことだし、本当にごめん…なことだ。 「…ごめん。本当に…ごめっ…」 そう謝りながらまたえずく俺の背中を擦る手があった。 その手の僅かな温もりに押し寄せてきていた吐き気が波のように引いた。 「飲み過ぎ食べ過ぎにはご注意を…。胃薬でも飲む?」 そう言ってクスクスと笑うそいつが憎かった。 けれど…突き放すことはできなかった。 いや、そんなこと、できるはずもないことだ…。 だって俺はずっと…。 「…探した」 俺はそう言って目を閉じた。 「…は? 誰を? え? 俺を?」 そいつのその言葉に頭も身体もカッとなったけれど、俺にはそいつを怒鳴る元気もそいつに掴み掛かる力も残ってはいなかった。 「なんで…消えたの? なんで…」 「…ナツ…お前の家、どこ?」 家…。
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