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プロローグ。
~・~・~・~
「真白はどうだった? アレ…」
各所(特に女子)からその情報は流れてきてもう知っていたけれど、真白本人の口からそのことを聞きたかった俺は何も知らないフリをして真白にそう訊ね、鼓動も歩調も早足にさせていた。
「え? 何? アレって…」
そう訊ね返された俺は『何って…』と言って真白に視線を向け、夏の熱い風に踊る真白の黒い艶髪にその視線を奪われてしまっていた。
「第二の性の…特性性別検査の…結果…」
そう答えると『あ~…』ダルそうな声が横から上がった。
「αだってさ。…で? ナツは?」
真白のその口調はその結果を誇るものではなかったけれど、続いて『で?』と俺のことを訊ねてきたその口調は珍しく好奇的なものだった。
「俺も…αだって…。一応…」
そう答えてヘラリと笑ってみた。
そんな俺を真白はじっと見てきて『ふ~ん?』と言い、俺をドキリとさせた。
「俺かナツ…どちらかがΩならよかったのにね?」
そう言ってクスクスと笑った真白に俺は大きな溜め息を吐き出すほど呆れていた。
「お前がΩとかあり得ないだろ? それに俺とお前、どちらかがΩだったとしてもそれがなんになるの?」
そう真白に訊ねながら見上げた空は絵に描いたような大きな入道雲をどどんと浮かべていて青と白のその空は紛れもなく真夏の夏空だった。
「番になれるじゃん? もしかしたら…運命の番にもなれたかも…」
運命…。
真白の口からふと出されたその言葉に俺はドキリとさせられた。
「…運命とか…ないでしょ? そんなの…」
「けど、あるかもじゃん? 今、こうしてナツと話せているのも運命かもだし…。いや…俺とナツの場合は必然…かな?」
α…Ω…番…運命…必然…。
そんな言葉を並べてクスクスと笑う真白はいい加減だ。
だけれど、そのいい加減さが心地よく、それが…そのいい加減な言葉の全てが俺には真実のように聞こえた。
そして、真白のそのいい加減な言葉の通りであって欲しいと俺は…。
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