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「そんなっ…そんな見通し立ってるわけないだろ!」
俺はそう言って繰り返し咳き込み、面白そうに『え~?』と言ってきた戸川に呆れていた。
「俺が社長に…なんてあるわけない。何を思ってそんなことを…」
俺はそう言ってなんとか落ち着き、溜め息を吐き出して残り半分となった特盛のトンカツ定食を見つめていた。
「え? だって白浜さん、αでしょ?」
α…。
何気なく発せられたその言葉が苦く、キツかった。
「そう…だけど…。俺は…」
俺は一般的なαとは違う。
だからαってだけでそんな期待なんて…。
「白浜さんはまともなαだと思うんですよ。俺…」
そう言ってニヤリと笑んだ戸川に鳥肌立った。
戸川はよくニヤリと笑う。
けれど、今のニヤリは…。
「…白浜さん? もう食べないんですか? トンカツ定食…。美味しくない?」
「え? あ…いただきます…。あとトンカツ定食、美味しいですよ」
俺はそう答えて残りのトンカツ定食を頬張ったけれどそのトンカツ定食に味はなかった。
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