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「バカ俊ッ!」 葵の怒りに部屋のドアが大きな音を立て、それでも腹の虫が収まらずに、葵はドアに向かって思い切り枕を投げつけた。 『葵には関係ないからだよ!』 ───そんなこと…………言われなくても解ってるよ………… それでも心配してしまうのだ。 自分がいない所で俊輔が辛い思いをしていたのだと思うだけで、放っておけなくなる。 本当なら今だって抱きしめたい。 以前のように、「大丈夫」だと「側にいる」と結衣に頼むのではなく、自分が隣にいたかった。 「……俊のバカ…………」 葵はベッドに倒れ込むと、夏用の布団を思い切り抱きしめた。 俊輔の薫を庇うような態度に思わずカッとした。 発作の理由を言わない事にも腹が立った。 それで、“そんなことで”、発作の後の不安な俊輔を追い詰めた。 守りたい筈の俊輔を余計傷付けるようなことをしてしまった。 ───バカは俺だ……調子の悪い俊を怒鳴って…喧嘩して…… 不意に子どもの頃、こっそりと俊輔の部屋に忍び込んだ時のことを思い出した。 ベッドの中で小さく丸まって泣いていた姿。 ただ守りたいと思った記憶。 ───俺が好きになんかなったから………… 消えるどころか積もり続ける想いを隠すように、葵は固く瞼を閉じた。
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