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あああ。
やめてやめて、関わりたくないのに。
だって御堂くんには親衛隊とかファンクラブとかがあって、少しでも御堂くんと関わろうとすれば風紀委員のような方々に「抜け駆けするな」とばかりに体育館裏に呼び出されて説教されるのだとかなんとか。そうやって聞いている。
だから私は御堂くんと同じクラスってだけでラッキーなのだ。それ以上を望んではいけない。望んだら、風紀委員に締められる。それだけは絶対に嫌だ。
誰も来ませんように。
誰も来ませんように。
必死に祈ったのに通じず、無情にもガララッと開くドア。ビクッと肩を揺らして振り向けば、上級生のお姉様方がキョロキョロと室内を見回している。そしてキッと鋭い視線が私と合わさった。
「ねえ、御堂くん来なかった?」
「……来てないです」
「嘘ついたらタダじゃおかないわよ?」
「ひっ!」
「やめなって、御堂くんがこんな芋っこい子相手にするわけないじゃん」
「それもそうよね」
お姉様方は私を嘲笑いながら騒々しく出て行った。
ピシャンとドアが閉まり足音が遠ざかる。完全にいなくなったのを確認して、ようやく私は胸をなで下ろした。
すると、クックックッと押し殺して笑う声が聞こえた。見れば御堂くんがお腹をよじらせて笑っているではないか。
これはこれで貴重な姿なんだけど……。
なぜ笑われているのかわからなくて私は首を傾げる。
「芋っこいって、ははは。ウケる」
「なっ!」
とたんに顔に熱が集まってきた。
確かに私はちびで丸顔で童顔で大きな眼鏡をかけているけれど、芋っこいなんて初めて言われたし、そもそも笑われるなんて心外なんですけど。
不機嫌に頬を膨らませていると「怒るなよ」 と御堂くんが楽しそうに言った。
怒ってはいない。だけど私は全然楽しくない。
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