1.人気のクラスメイト

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私はめまいがする思いで必死に意識を保つ。 嘘でしょ。 私の存在薄すぎじゃない。二年も同じクラスなのに。しかも私の前髪、俺はいいと思うって言ってくれたじゃない。それすらも忘れられてるっていうことだよね。 ああ、なんか悲しくなってきた。 「……じゃあ、私の名前も知らないってこと?」 「芋子?」 「違います!」 ため息をつきたくなるこのやり取りに、私はがっくりと肩を落とした。 そりゃ私は地味だしどちらかというと大人しめだけど、顔すら認識されていないとか、本当にショック。まあ、御堂くんの人気に比べたら私なんかミジンコレベルだけどさ、それでもさ、もうちょっとあるじゃない? 「で、名前教えろよ」 御堂くんは椅子にどっかり腰を下ろし、頬杖を付きながら楽しそうに言う。なんでそんなに上から目線で偉そうなんだろう。 私は少しむっとしながら答える。 「秋山千花子(あきやまちかこ)です」 「ふーん、でさ、芋子」 だからなんでそんな小野妹子みたいな。 御堂くんは私の話なんてちっとも聞いていない。 「メガネ外してみてよ」 「へっ? な、なんで?」 「見てみたいから。芋子の顔」 意味不明なんですけど。 私の顔を見てどうするっていうのよ。 それにそんなことを言われると緊張すると言うかなんというか。 御堂くんはその端正な顔でじいっと私を見る。 「えっと……あっ」 躊躇っているとすっと手が伸びてきて軽やかにメガネが外される。視界がぼやけた。 私の顔を覗き込んだ御堂くんは口の端を上げる。ぼやけた視界でも御堂くんはハッキリ見えた。それくらい、彼は私に顔を近づけていたということで……。 「へえ、可愛い顔してんじゃん」 ボンっと音がして頭から湯気が出たと思う。 真っ赤になった私は金魚みたいに口をパクパクさせた。
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