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◇
ガララッピシャン
突然のその音に振り向けば、スラリとした体躯にブレザーがよく似合う御堂くんがズカズカと美術室へ入ってきた。昨日また来ると言った御堂くんが、翌日本当に来たのだ。
「なんでそんな驚いた顔してるんだよ?」
「だって、本当に来るとは思わなくって」
「また来るって言ったよな?」
「言ってたけど、でも……」
「でも、なんだ?」
「……御堂くんは人気だから」
人気者だからあっちこっち引っ張りだこでしょう?
それにクラスにいるときだって一言さえ私と言葉を交わさなかったのに。
そう言いたかったのに私の口は言い淀む。
はー、と御堂くんはため息をつきながら私の隣に座った。
頬杖をつきながら私を睨む。
「そう、俺様は人気なんだよ」
う、うん。
それ自分で言っちゃうんだ。
しかも俺様って。
「俺ってそこら辺の芸能人より人気あると思わねえ? 毎年バレンタインには持ちきれないほどチョコ貰うし俺のファンクラブまであるらしいじゃねーか」
「あー、うん、そうだよね」
実は私も入りたかったけど、勇気がなくて入れないやつだ。誰が運営しているのかわからない非公式のものだけど、会報まで作っているらしい。確実に隠し撮りとかあるやつ。見てみたい。
「なんかそういうのって煩わしいよなー」
「えっ」
ドキッとした。
御堂くんはそういうのよく思ってないのかな。人気があるのってすごいことだと思ってたけど当人はそうでもないみたい。じゃあ私、入らなくてよかったのかも。
「……もしかして芋子も入ってる?」
「は、入ってない」
「ふーん」
私は動揺がバレないようにキャンバスに向かった。
心なしか筆を持つ指が震えてしまう気がする。
き、緊張する。
それもこれも隣に御堂くんがいるからで ――。
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