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疑われるのも無理はないが、こればかりは本当のことである。
あまりこちらの情報を秘していると取引が上手くいかない。リノアは事情を話す。
「この町の少し先の山の中にシュプレーナの妖樹があるのは知っている?ついさっきそこで取ってきたものよ。信用できないのなら確認しに行っても良い。妖樹が1本まるまる切り倒されているから」
「はぁ?!そんな馬鹿な」
「もちろん、事故よ?狙って切り倒したわけじゃない。たまたま弱点を突いてしまっただけ。でも倒しちゃったなら果樹は全部もらわないと損じゃない」
あまり知られていないが、シュプレーナの妖樹には弱点がある。
それは木の洞の中にある。なぜかこの妖樹には必ず洞が存在していて、その中にある核を突くと息絶える。
ただ、獲物を狙う妖樹の動きは俊敏で、狙ってそこを突くことは万に一つも無理。
ただ、ごく稀に人族でも弓を射ったら当たってしまったということがあるのだ。
このおじさんがその弱点の存在を知っているかは分からないが、これで誤魔化されてくれるのを願うしかない。
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