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恐らく、ちょっとした贅沢として食べられる果物として、今リノアが売ったシュプレーナは並ぶことはない。
だが、違った形で市民の手に渡るのだろう。
「薬はやっぱり高価なもんだからよ、1個1銀貨であんたから買い取っても、医者にはもっと色がついて売ることができる。なんならもっと高く買い取ったって俺の懐は痛まないくらいだ。だけど、そうすると薬の値段が高くなっちまう。……だから姉ちゃんには悪いけどよ、その値段で買い取らせてくれねーか」
頭を下げて頼み込んでくるおじさん。
リノアに1個1銀貨で売れば、おじさん自身も医者に通常よりも安く売ることができる。そうすれば薬も安くて市井で買いやすいというわけだ。
「……別にかまわないわ。私は果物としてのシュプレーナを売ったの。1個1銀貨なんて大儲けじゃない。売った後はおじさんのものなんだから好きにしたらいい」
ぶっきらぼうに答えるとおじさんはありがとな!と大きな声で礼を言う。
素直じゃないリノアはぷいとそっぽを向いて返事をしなかった。
「それじゃこれ。銀貨30枚だ。きちんと数えてくれよ」
袋に入った銀貨をリノアもちゃんと確かめる。
間違いなく30枚の銀貨が入っていた。
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