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三人は互いの顔を見合わせと、ふーむと思索にふけるように顎に手を当てた。
「賢者を欺くか……それは面白い仕事ですね。賢者と愚者、はたしてどちらが上なのかを示すことができる」
アルコが呟くと、リコスはそれに続いた。
「まあ、僕は面白いことができれば何でもいいのだけれど」
「それじゃあ、三日のうち一日ずつ、それぞれが賢者の元へ向かうということでいいかしら? 最初は私に行かせてもらうわ」
「……何かいい策でもあるのか?」
「ふん、私の色香にかかれば、口説けない輩などいない。浮世離れした賢者などすぐに落としてみせるわ」
ラウナは豊かな胸に手を載せると、自信ありげに口角を上げた。
「それではまず一日目はラウナ、二日目リコス、そして三日目アルコの順で東の森へ赴き、大賢者を騙してみせよ。四日後に再びここに集まり、お前達の話を聞こう。それでよいな?」
「仰せのままに」
三人が席を立つと、その姿は部屋の暗がりに溶け込むように霞んでいった。
残されたマスターは鳩を手元に呼び寄せるとそれを花に戻し、鼻先に近づけると芳しい香りを楽しんだ。
「さて、皆も行ったことだし、私も消えるとしようか……」
シュンと一瞬のうちにマスターの姿は消え、円卓には灯が揺らぐランプだけが残された。
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