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真実の鏡
マスターからの依頼から四日が経ち、再び三人は愚者ギルド『トリックスターズ』に集っていた。
三人は円卓に座ったまま会話をすることもなく、ただ険しい面持ちでマスターを待っていた。
「皆の者、待たせたな」
ふと呼びかけの声に気づくと、すでにマスターは席に座っており、白い花をゆらゆらと揺らしていた。
「さて……大賢者の正体を暴くことができたじゃろうか? まずはラウナの話から聞くとするか」
「はい、大賢者の正体は女戦士でした。勇敢で慈愛に満ちた素敵な女性、そして彼女の生き方を知り、私は新しい希望を持つことができた。私も彼女のように人々を助けるために戦う勇者になりたいと思いました」
普段妖しい目つきで睨むラウナからの予想もしなかった言葉の数々に、アルコとリコスは目を丸くした。
「次にリコス、お前はどうだった?」
「大賢者の正体は若い薬師でした。自然にある植物を採集し、薬品を作っていました。僕も魔術で人を惑わすより、人々の命を救う医術の研究をしてみたいという夢を掴みました」
「二人とも話が違うようだが……アルコ、お前にはどう見えた?」
「私には年老いた考古学者に見えました。太古の遺物を収集し、歴史を探究する人物。私もどうせ盗むなら、世界中の迷宮を盗掘しながら秘宝を発見する旅に挑戦してみたいと思うようになりました」
「一人として同じように見えた者はおらんな……」
「マスター、これはどういうことでしょう?」
ラウナが不思議そうに問いかけた。沈黙が続いたが、しばらくするとマスターは白い花を見つめながら語り出した。
「うむ、大賢者に見事に騙されたということじゃ。お前達の見たものは『真実の鏡』という大賢者の宝具であろう。『真実の鏡』は己を映し出す鏡、つまりお前達が求める自分自身の夢の姿と会話したということじゃ」
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