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「え……と、じゃ、二年生から順に教室へ戻ってください」
オリエンテーション終了のアナウンスが入ると、担任からホームルームが無いと伝えられたこともあり、皆俊敏な動きで立ち上がった。
開放されたシャトルドアからは、風が吹く度ふわりと沈丁花の香りがしてきて春らしさが迸っていた。
体育館履きから上履に履き替えていると、不意に肩を叩かれた。なんだ、と思い振り返ると見慣れた顔。
「よっ」
覗き込むようにして見下ろしてくる星宮に、私は溜息を一つ吐くと。
「はぁ……私じゃなきゃセクハラで訴えられてるわよ」
「さいで。まあ、それは置いといて。今年もよろしくな。姫橘」
「ええ、よろしく。ただ今年もあんた達トリオが揃ったってことが心配でならないわ……特にあの二人」
「まあな。けど、その分今年も色々楽しめそうだろ?」
「……そうね」
教室に着くなり聞こえてきた残念なやり取りに視線を向けると、件の二人——鰄紬と白雪零——が壁に寄りかかって居た。
「だから、納豆パスタがあるなら納豆ラーメンとか納豆うどんとかあってもいい筈だろ」
白雪が話を振ると、鰄は流れるように頭痛いポーズを取って矢継ぎ早に。
「いや、絶対に汁が悲惨なことになってるって。っちゅ〜かお前エスカルゴで懲りたんじゃねぇの?」
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