クストディオの邸宅

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「お手伝い致します」  服を脱がせようとするメイドたちに「大丈夫です! 自分で脱げますから! 大丈夫!」とアイナは必死で抵抗した。  服を脱がされてしまったら、輝石産みであることがバレてしまう。それだけはどうしても避けたかった。  一人になることができたアイナは、湯船に浸かる。  浴室はやはり豪華で広々としてた。  石は大理石だろうか。  白いマーブル模様の石が精緻に組み合わさっている。  浴室に飾られた彫刻も見事だった。  学のないアイナには何がモチーフなのか見当もつかなかった。  背中に羽の生えた人間が彫られているので光翼族の神話か何かがモチーフなんだろうな、とそんなことを考えていた。  透明で清潔なお湯が湯船一杯に満たされていた。  こんな深夜に、アイナ一人のためにこれだけのお湯を沸かせられるのだ。  本当にクストディオという人はお金持ちなんだなーとアイナは考えた。  お湯を手で掬ってみる。  その腕には、いつもの通り輝石が張り付いていた。 「……」  夢のようなお屋敷にいるから忘れてしまっていたが、現実はこれだ。  私はしょせん、輝石産みなのよね。  腕から胸にかけて、無数の輝石がアイナの肌を覆っている。  生まれたばかりの輝石も多いが、そろそろ収穫できる大きさに育った輝石もいくつかあった。  あの火事の現場でクストディオに腕を掴まれた時。  クストディオは腕に生えていた輝石の感触に気がついたのだろう。  肘のあたりについている輝石を見た。  親指大に育った輝石はそろそろ収穫時期だ。  収穫できる大きさになるまでに、個人差はあるが大体半年かかる。  この大きさの輝石が一つあれば、庶民だったら四、五ヶ月は遊んで暮らせるのだった。  輝石産みを保護すれば、輝石が手に入る。  そういう下心があったんだろうな。  こんなに立派なお屋敷に住んでいるんだから、輝石の一つや二つで一喜一憂することはないだろうに。  それでも輝石が欲しいのかしら。  でも、クストディオは命の恩人だった。  馬車の中で見た柔らかい笑顔が忘れられない。 「輝石をあげるくらいいいわよね」  アイナは自分にそう言い聞かせた。  湯船から上がると清潔な寝巻きが用意されていた。 「こんな高そうな寝巻きいいのかしら」  恐る恐るといったふうにアイナは袖を通す。  ふんわりと柔らかい寝巻きは織物工場で作っていた生地とは比較にならなかった。  世の中にはこんなにも柔らかい服があるのね。 「お着替えはよろしいですか?」 「は、はい。大丈夫です」  アイナが柔らかい生地に感動していると、ドアの向こうから声がかかった。  メイドが待機していたらしい。  アイナの声に反応してメイドたちが入ってくる。  椅子を持ってきたメイドがアイナを座らせた。 「あ、ありがとうございます」  その椅子がまたふかふかとクッションがいいのだ。  硬い木の椅子しか知らないアイナはふかふかとした感触に驚いていた。
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