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※ ※ ※
「うぅ……ん」
アイナはうっすらと目を覚ました。
薄暗い室内が見える。
そろそろ夜明けだ。起きて、朝の仕事をして、朝ごはんにありついて、午前中の仕事して……。
決まりきった毎日だが、頭の中で行動を確認する。
たまにイレギュラーが発生するか確認は大切だ。
今日は、力仕事嫌だな。
体の節々が痛いもの。
だって、昨日は……。
あれ? 昨日は、火事の中を逃げてそれで……。
ガバッとアイナは跳ね起きる。
そうだ。
火事だ。
火事で焼け出されたんだった。
ここはどこ?
見渡せば、豪華な室内装飾が見えてくる。
ベッドも天蓋も豪華だった。
壁だと思っていたのは分厚いカーテンで隙間から陽光が差し込んでいる。
アイナはベッドを降りてカーテンを開けた。
カーテンを開ければ、窓の向こうには綺麗に整えられた庭園が見える。
太陽はすっかりと昇っていて、すでにお昼近いことがわかった。
「えっ? えっ?」
アイナが混乱しているとドアがノックされる。
「は、はい」
メイドが一人、入ってきた。
「よく眠れましたか?」
「は、はい」
「お食事をお持ちいたします」
「は、はい」
もう、何が何だかわからない!
窓の前で混乱していると、メイドたちが入室してきてテキパキと食事の用意がされた。
カーテンが開けられ、テーブルと椅子がセッティングされ、テーブルクロスが敷かれる。
そこへ、カゴに入ったパン。サラダと卵料理、スープ。カトラリーが丁寧にセッティングされる。サイドテーブルが置かれティーセットまで用意されていた。
アイナは緊張で固まってしまっていた。
こんなにも高級そうな朝食なんて見たことない!
ナイフもスプーンもフォークも随分と久しぶりに見たような気がする。
織物工場の食事では、パンと薄いスープくらいしかなかった。それを手づか
みで食べるのだ。粗雑な扱いしかされてこなかったからだ。
マ、マナーとかよくわかりません。
このメイドに囲まれた状況で食べろというの!?
アイナがなかなか手を出せずに固まっている。
「私どもは外におりますので、ご用の際はお呼びください」
「は、はい」
雰囲気で察してくれたのだろうか。
メイドたちが退出してくれる。
よかった~。見つめられてたら食べられなかった。
アイナはようやく一息つけたのだった。
用意された食事に恐る恐る手をつける。
「柔らかい……」
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