クストディオの邸宅

4/6
前へ
/61ページ
次へ
※ ※ ※ 「うぅ……ん」  アイナはうっすらと目を覚ました。  薄暗い室内が見える。  そろそろ夜明けだ。起きて、朝の仕事をして、朝ごはんにありついて、午前中の仕事して……。  決まりきった毎日だが、頭の中で行動を確認する。  たまにイレギュラーが発生するか確認は大切だ。  今日は、力仕事嫌だな。  体の節々が痛いもの。  だって、昨日は……。  あれ? 昨日は、火事の中を逃げてそれで……。  ガバッとアイナは跳ね起きる。  そうだ。  火事だ。  火事で焼け出されたんだった。  ここはどこ?  見渡せば、豪華な室内装飾が見えてくる。  ベッドも天蓋も豪華だった。  壁だと思っていたのは分厚いカーテンで隙間から陽光が差し込んでいる。  アイナはベッドを降りてカーテンを開けた。  カーテンを開ければ、窓の向こうには綺麗に整えられた庭園が見える。  太陽はすっかりと昇っていて、すでにお昼近いことがわかった。 「えっ? えっ?」  アイナが混乱しているとドアがノックされる。 「は、はい」  メイドが一人、入ってきた。 「よく眠れましたか?」 「は、はい」 「お食事をお持ちいたします」 「は、はい」  もう、何が何だかわからない!  窓の前で混乱していると、メイドたちが入室してきてテキパキと食事の用意がされた。  カーテンが開けられ、テーブルと椅子がセッティングされ、テーブルクロスが敷かれる。  そこへ、カゴに入ったパン。サラダと卵料理、スープ。カトラリーが丁寧にセッティングされる。サイドテーブルが置かれティーセットまで用意されていた。  アイナは緊張で固まってしまっていた。  こんなにも高級そうな朝食なんて見たことない!  ナイフもスプーンもフォークも随分と久しぶりに見たような気がする。  織物工場の食事では、パンと薄いスープくらいしかなかった。それを手づか みで食べるのだ。粗雑な扱いしかされてこなかったからだ。  マ、マナーとかよくわかりません。  このメイドに囲まれた状況で食べろというの!?  アイナがなかなか手を出せずに固まっている。 「私どもは外におりますので、ご用の際はお呼びください」 「は、はい」  雰囲気で察してくれたのだろうか。  メイドたちが退出してくれる。  よかった~。見つめられてたら食べられなかった。  アイナはようやく一息つけたのだった。  用意された食事に恐る恐る手をつける。 「柔らかい……」
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

248人が本棚に入れています
本棚に追加