メイドのお仕事

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メイドのお仕事

 このメイド服も支給品だ。それもタダだ。  いやタダというと語弊があるかもしれない。  ここマンディザバル邸では仕事に必要なものは全て雇用主が負担することになっているのだそうだ。  どれだけメイド服を汚しても、雑巾を使い倒しても使用人の給金から引かれないのだという。  働き始めた時、アイナが「お金がないので制服を給金で後払いできませんか?」と執事のブラウリオに相談したところ「そういう備品はマンディザバル家が負担するから心配しなくても大丈夫だよ」と返答されたのだった。  それを聞いた時のアイナの表情は面白かったと、同僚のメイドのイネスからは笑い話にされている。  今までの職場では、生活に必要なものはもちろん、仕事で使う道具まで給金から差し引かれるものと決まっていたからだ。  このお屋敷は随分と気前がいいんだなぁ、とアイナは思ったのだった。  そこまで良い環境で働けるのだ。  頑張ってお仕事をしなければ! とアイナは気合を入れて毎朝、起きている。  まずは水汲みをしなくちゃね!  アイナは調理場の裏手にある井戸へと移動した。  マンディザバル邸にはなんと贅沢なことに何箇所か井戸がある。  そのうちの一つが調理場の裏にあり、調理や使用人の生活水として利用されているのだった。  アイナは毎朝、起きたら井戸から水を汲み水甕に組むことから始めている。 「あー、腰が痛い!」  でも楽しい!  マンディザバル邸では理不尽に怒られることがないし、八つ当たりされることもない。ましてや、食事を抜かれることもないし、薄着で納屋に閉じ込められることもなかった。 「ちょっとアイナさん! また勝手に仕事してる!!」  振り返れば、メイド頭のカリサが怒り顔で立っていた。 「おはようございます!」  アイナはキョトンとしながら挨拶をした。何か怒られるようなことをしてしまったのだろうか。  井戸から水の汲み方が悪かったのかしら? 「おはよう。ねぇ、仕事を始める前にまずは打ち合わせをするって言っているでしょう?」 「あ、そうでした。すぐに終わらせますから」 「そうじゃなくて。一人で勝手に仕事を進めないでって言っているの!」 「は、はい」  怒られてしまった。  落ち込んでいるアイナを見てカリサはため息をひとつつく。 「水汲みはありがとう。それじゃ、次はイネスと一緒にカーテンを開けてきてくれる?」 「それなら、私一人で……」 「いい? 私は二人でって言ったの。イネスと行ってきてくれるかしら」  カリサはいい含めるように言うので、アイナは小さく「はい」と返事をした。 「それじゃ、部屋の右側からお願いね」 「はい!」  イネスに言われてアイナは部屋の右奥に移動した。
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