9人が本棚に入れています
本棚に追加
「目を閉じてよ、奏和」
しびれを切らしたのか、さらに距離を縮めてきた。
こいつキスするつもりか?
凪葵の態度は冗談ではなさそうだ。
ここまできたら後には引けない。動揺した方が負けのような気がした。
覚悟を決めて目をぎゅっと瞑れば、少しして唇にふにっとしたやわらかな感触を感じた。
だけど、それはすぐに離れる。
目を開ければ、凪葵は無表情のまま首を傾げていた。
「こんなもんか」
あいつはそう言ったが、俺は内心、心臓がバクバクしていた。
相手はただの親友。しかも男だ。
だけど、はじめてだったせいか、唇と唇が触れただけで胸が破裂しそうだった。
「付き合ってると違うんじゃねーの」
平静を装って適当なことを言えば、凪葵はそっかーと納得している。そして、言葉を続けた。
「じゃあ、付き合ってみよう」
「はぁ!?」
驚きのあまり上擦った声を出してしまった。
「だって、付き合ってキスしたら気持ちよくなるんでしょ?」
「知らねーけど」
「試してみたい」
ただ貪欲に好奇心というだけで言っているのだろう。
だけど、誰かと付き合うという経験はしたことがなかったから、それをよく知っている凪葵とできるのはラッキーかもしれない。
「よし、試そうぜ」
それから俺は、凪葵と付き合うことになった。
最初のコメントを投稿しよう!