1

3/7
前へ
/17ページ
次へ
 付き合うといっても、今までと何ら変わりない。  学校へ一緒に行って、昼を共にし、放課後は二人で帰る。  帰宅後は、どちらかの家で漫画読んだり、ゲームしたり、くだらない話で盛り上がった。  少し違うのは、どちらからともなく、軽く唇を重ねる。触れるだけの優しいキス。 「前と違う? 気持ちいい?」  凪葵はうっすら笑って言う。 「どうだろうな。わっかんねー」  本当は、前よりもずっと胸の鼓動が激しくなっていた。  それを知られたくなくて凪葵から顔を逸らし、冷静に見せる。  付き合ってからというものの、四六時中、俺は凪葵のことばかり考えていた。  離れていると不安になるくらいだ。  あいつが特別だと、徐々に自分の中で凪葵の存在が大きくなっている。  それは、幼馴染で親友という域を超えていた。    凪葵はどう感じているのだろうか。  俺と唇を重ねるのもただ試しているようで、何も感じていないのはわかっていた。だから余計に苦しくて辛くなる。  きっと俺はもう、凪葵のことを手放したくない。  今更、ただの幼馴染の親友になんか戻れるはずないだろう。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加