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「もう、やめようか」
いつか聞かされるだろうと思っていたその言葉が、面倒くさそうな顔をした凪葵の口から吐き出された。
「別れるって、ことか？」
俺の声は震えていた。認めたくなかった。
「うーん、そうなるかな」
早かれ遅かれこの日が来ることは想像していた。
だけど、いざ現実になれば、息ができないほど苦しくなる。
気持ちがあるのは俺だけだということが胸に突き刺さった。
泣きそうになるのをグッと堪えた。
こんなことで泣くなんてかっこ悪い。
凪葵の前では涙を見せたくなかった。
ぎりっと奥歯を噛みしめる。
口を開けばきっと、泣いてしまうから。
「最後に」
凪葵の言葉に顔を上げれば、あいつは言葉を繋げた。
「キス、しようか？」
なんでそんなこと言うんだよ。別れる相手にキスするなんて。
涙腺が崩壊しそうで、凪葵から顔を背けた。
それなのに、凪葵は俺に近づき、髪をくしゃっとしながら頭を撫でてくる。
もう片方の手は頬に添えてきて、軽く上を向かされた。
しばらく見つめ合っていたが、凪葵のことを見ているだけでズキズキと胸が痛くなるから瞼を閉じた。それと同時にあいつは唇を重ねてくる。
それはいつもの触れるだけのものとは違った。啄むようなキスを何度も繰り返すから離れがたくなる。
残酷だよ。
俺の気持ちを知ってて弄んでるように思える。
それでも俺は、凪葵のことが好きなんだ。
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