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 その日の朝、俺は、あくびをして眠たい目を擦りながら、奏和(かなと)が迎えに来るのを待っていた。  昨日、奏和とお試しで付き合っていたのを解消した。  元々は俺のわがままで始めたこと。もっと早くにやめるべきだった。  付き合うようになってから、今まで以上に奏和は俺と一緒にいてくれるようになった。  人気者の奏和を独り占めできるのはすごく嬉しかった。  『一人にこだわりたくないんだよ。いろんな人と出会って、俺は成長したいんだ』  奏和がよく言っていた言葉だ。  自信にあふれ、前向きに振る舞っているあいつはいつも輝いている。  人を気遣うことができ、誰もが奏和のことを慕っていた。  たくさんの人に愛され、彼らを魅了する。  俺には絶対できないことだ。  それなのに――。 『奏和の奴、最近付き合い悪いよな』 『感じ悪くね?』  そんな言葉があちこちから聞くようになった。  俺のせいで奏和の評判が落ちるのは耐えがたい。  それでも、あともう少しこのまま――そう思っていたけど潮時だった。  
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