ピアノの音と知らない顔

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 あれから、私はアイツのピアノを聞くために下校見回り担当を自分から引き受けるようになった。そして、必ず見回りの最後にこの音楽室に来る。アイツがよく音楽室で課題に追われているため、音楽科の先生から音楽室の施錠を一時間遅らせてほしいと頼まれて以来、私は他の教室の確認を終えてから音楽室の鍵を借りて音楽室へ向かう。  今日も、アイツの音が聞こえる。  重いドアを押し開き、音楽室のアイツの定位置であるピアノの椅子を見る。 「まだピアノ弾いてるの?」  ピアノを弾く手を止めてこちらを見るアイツは少し不満げに膨れている。  今日も、あと一時間。  課題見てあげるから、アンタのピアノ聞かせてよ。
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