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エレス村
草原へ辿り着き、姉さんは、色んな物を物色し始めた。
そのなんでも触る癖は何なの…?
「…うわぁ…これは…何て言う植物なの?」
「…見た目がヤバそう…」
あれ、どこかで見たことがあるような。
僕は何故かバッグから、分厚いを本を取り出した。
ページをパラパラとめくって、その植物を探した。
名前は勿論、僕が知るはずないが、本さえ持っていれば知ることが出来る。
何故、そんなものを持っているのかは、分からないが。
「何それ」
「なんか、バッグに入ってた…」
「見たところ…あった、フレアリングっていう花らしい」
「花…なの?」
僕の持っている本を覗いて、眉を潜める姉さん。
確かに花には、全然見えない。
これが、花だと分かっていれば、なんとなく…見えなくもない。
「どうやら、薬草とかに使えるみたいだね」
「使い道は分からないけど、とりあえず持っていこう」
姉さんは、その花を一輪摘んで、ポケットに入れた。
「あ、見てみて!向こうに村が見えるよ!」
「本当だね、何か情報が得られるかも…行ってみようか」
僕と姉さんは、東の方角に見える村に向かった。
この世界が何なのか、何か情報が得られれば良いのだが。
村までは、意外と近く、平原を抜けた先にあった。
恐らく入り口であろうその場所には、看板が立て掛けてあり、その奥に村人らしき人を見かけた。
「…これ…何て読むんだろ」
「………エレス…村って書いてあるみたい」
「え、渚、読めるの!?」
「そうみたい」
「とりあえず、向こうに人がいるみたいだから、話しかけてみよう」
僕は、呆気に取られている姉さんの腕を掴んで、村に入った。
ーエレス村にて
村に入ると、村の人達が一斉に僕達に視線を向けた。
僕は、怖くなって姉さんの後ろに隠れた。
「大丈夫だよ、渚、悪い人達じゃないみたいだし」
と、姉さんは、平然としていた。
「あの、向こうの森から来た者なんですが…」
「都市に行くには、どちらへ向かえば良いでしょうか……?」
姉さんが話すと、村の人達の顔色が変わって、一人の女性が口を開いた。
「もしかして、ソルジャーさん達かしら」
「都市なら、この村を出て西に進めばあるよ」
と、あっさり教えてくれた。
ソルジャーとは、何だろうか。
意味は分かっている、ネトゲを長年やりこんでいたからね。
役職は、どうやらソルジャーらしい。
「森を出てきたって…怪物が沢山いたあの森から…?」
「それは、大変でしたね、これから都市に向かわれるのなら、今夜は泊まった方が良いと思います」
「都市からは、どのくらい距離があるんですか?」
「丸二日は、掛かると思いますが…」
その言葉を聞いて、少し考えてから。
「そうですね、今夜はお世話になることにします」
と、頷いた。
「宿は、ここから少し奥に行ったところにあるので、そちらを使ってください」
「分かりました」
話は、すぐに終わり、宿を貸してもらえるとの事だった。
優しい人達に会えたな…。
すると、村人の一人が…
「この村に、ソルジャーさんが来たのは、何年ぶりだったかなぁ」
と、気になることを言い始めた。
「…何年ぶり…って、私達の他にもソルジャーがいるんですか?」
「あぁ、沢山いたよ」
「ほとんどが、任務で都市から来ている人達だけどね」
「でも、2年前に起きたあの出来事から、それっきり…」
「2年前に…起きた…出来事?」
「差し支えが無ければ、教えていただいてもよろしいでしょうか?」
姉さんは、気になったのか、聞いてみた。
僕は、黙ってその様子を眺めた。
「……そうですね…、せっかく来ていただいたんですから、教えましょうか。」
「そうだね、その方が村の為だ」
と、少し話してから、村の村長である女性が現れた。
「2年前の出来事…それは、都市の侵略でした…」
「……都市の…侵略!?」
「はい、この世界の中心にある都市、ルナフォードシティーと呼ばれる都市は、2年前まで職業持ちの方々が沢山住んでいました。」
「人々が楽しく幸せに暮らせるようにと、市長自らが町の手伝いや、整備などを行っていたのです。」
「市長の名前は、クロエ・ルナフォード」
「ルナフォード家は、代々市長を務め、ずっと人々の暮らしを支えてきてくれたのです」
「……この都市の中心には、世界の克てである、コアという物が存在しています。」
「…コアって……ずっと遠くで光ってるアレの事?」
「そうです、あれがこの世界の全てです」
「…しかし、2年前、そのコアは、市長の妹である、ルミネ・ルナフォードによって破壊されてしまったのです」
その言葉に、驚きを隠せない姉さん。
僕も、ヤバい事だと理解できた。
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