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ーカルライナ街への道ー
よく朝、目が覚めると何故か泣いていた。
時々、そんなことがよくある。
どうして泣いていたかなんて分からないけど。
「……」
鏡に写る自分を眺めて溜め息をついた。
「どうしたの?」
「…ううん、疲れただけ」
「今から出発なのに、大丈夫?」
「うん、平気だよ」
通りかかった姉さんに心配されたが、平気とだけ言っておいた。
これからは、弱音なんて吐いていられないんだから。
ー 宿を出て、村の出口へと向かった。
「ここから、南東にずっと進むと、カルライナと呼ばれる街があります。」
「もしかしたら、そこで都市について何か得られると思います」
「はい、ありがとうございます!」
村長と村の人達に別れを告げて村を出た。
1日だけだったが、いい人と出会えて良かった。
これからは、どんな人達と出会えるんだろうか、考えるとなんだかワクワクしてきた。
「さっきから、ずっと無言だけど?」
「…少し不安なだけだよ」
「そう?まぁ…それもそうだよね」
姉さんは、少し苦笑して前を向き直した。
時々現れる敵を倒して、進んでを繰り返し…。
村の人達に教えてもらった経験値とやらを集めている。
「これでレベルアップ出来そうだね」
「どうやら、カルライナ街には、強化所があるみたい」
「それじゃあ、まずはそこを目的地にしようか」
「うん!」
剣をしまって再び歩き出した。
この旅…なんだかおかしいような気がするけど。
「んー、この果物…酸っぱい…」
「この前食べたアレとは、違うみたいだね」
「でも、なんだかお腹いっぱいになった…」
姉さんは、少し溜め息をついた。
今現在、カルライナ街に向かって歩いている。
しかし、歩きのため、当然だが疲れる。
「おかしいなぁ…ここら辺だと思うんだけど…」
しかし、目の前には洞窟や森など、街らしき物は1つも見当たらなかったのだ。
「やっぱり…おかしいよ…」
「何が…?」
「どうしてこんなに、遠くまで来たのに、敵1人もいないんだ」
「…確かに…言われてみれば…そうだね…」
姉さんは、地図を片手に洞窟の奥をじっと眺めた。
「…洞窟内には、敵がいないみたい…」
「…つまり、ここは誰かが以前通ったって…事?」
「確信が無いから本当かは、分からないけど」
と、姉さんは苦笑した。
「でも、とりあえずはここを進まなきゃ、街に行けないよ」
「…」
僕は、姉さんに渋々と着いていった。
一度、村に戻って確認し直した方が…いいのでは?
~数時間後~
「…これは……動物の…死骸…?」
「…死んでからそんなに、経ってないみたい」
僕は、死骸の前にしゃがんでじっと、観察を続けた。
傷を見る限り、噛まれたか何かだと思うけど…。
一体何があったんだろう…とりあえず、街に急がなきゃ。
「…待って、誰か来たみたい…」
姉さんは、僕の前に手を出して止めた。
恐らく静かにしろと言う意味だろう。
僕は黙って様子を伺った。
「最近、魔物が1匹も見当たらないんだ」
「おかしいよな、この世界に役職持ちはほとんどいない筈なのに」
「…見ろ、死骸だ…しかもまだ新しい」
「……これは、指令部に報告した方がいいんじゃないか?」
「あぁ、そうだな」
と、声はだんだん遠ざかってって消えていった。
ひとまず、安心だ。
「…今…指令部って…聞いた?」
「う、うん…確かに聞こえたよ」
「もしかしたら…都市について知ってることがあるかも…」
姉さんは、立ち上がって、進もうとした。
「そこの2人、何してるの?」
僕と姉さんは、振り替えって剣を構えた。
「わっ!?ちょ、ちょっと待って!怪しい者じゃないから!」
金髪の女性は、剣を見て驚いた。
どうやら、敵意は無いみたいだが…。
「貴女…名前は?」
「私?私は、アイリス」
名前を聞かれてあっさりと、答える女性。
「…敵…じゃないみたい」
僕と姉さんは、剣を降ろした。
それを見てアイリスと名乗る女性は、安心したような表情をした。
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