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「いや、だめだ。芳恵には俺からがっちり言っておく、鎌倉の頭をばかにしたらこの町じゃ生きていけないって言っとく」
「おめえも頑固だねえ、俺がいいって言ってるじゃねえか。女の弱さを理解してやれよ」
徹平はむきになって芳江への忠告を阻止した。
『おおっ』と言う感嘆の声が殺風景な病室にあがりました。病室にいる全員の、そして隣のじいさんまでがその声に誘発されて入り口に視線を集中しました。そこには牛乳ビンの口から大きく広がる鮮やかな花達が競演していました。勿論主役はサラマリアさんで、全ての花を抑えて一番きれいに咲き誇っていました。向いで療養している、中年男性患者の付き添い婦がサラさんに近寄り、「綺麗だねえ。おめでとう、幸せにね」と声をかけると、病室から拍手が沸き上がりました。隣のじいさんも半身起こしておもいっきり手を叩いていました。
「全くしょうがねえなあ、やっちんカーテン閉めろ」
嬉しくてしょうがなくて、泣きっ面を見られるのが恥ずかしい徹平はカーテンの中で泣いていました。
事件から3週間が経ち普段通りの生活に戻った。
「おふくろっ、早くしてくれよ。ああっ漏れそうだ」
「母さんまだ時間かかりますよ。雄二君ちで借りなさいよ」『ブキョブキョビッチョ』
「なんだブキョブキョって、何を食えばそんな音で出て来るんだよ、ちっきしょうふざけやがって」
今日は学校まで我慢するのは無理のような気がする、いちかばちかの勝負をかけて、途中で漏らしてしまったらそれこそ大恥をかく。中学生のときの二の舞はこりごりだ、想い出すだけで臭ってくる。
生まれつき腸の出来が良くないせいか食後すぐにトイレに駆け込む。それが習慣になっていて、おふくろや弟に先を越されると時間に余裕のない朝は非常に困る。中学で無遅刻無欠席を優一の勲章と考えていた俺はぎりぎりまで待っていたがおふくろは出てくるどころか、一層激しくブチかまし続けた。仕方なく用を足さずに登校する嵌めになってしまった。堪えに堪えて校門までの最後の上り坂に差し掛かったとき、後から忍び寄って来た徹平がいきなり指浣腸したのだ。集中して捻る事によって詮をされていた腸と外部との通用門は外からの不法侵入者によっていとも簡単に破られてしまった。開いた穴は自力では塞げない。俺は垂れるに任せて男子トイレまで走った。下着は見るも無惨に汚されていたが、幸い学生ズボンに害はなく、用を足した俺はパンツを脱ぎ、カバンの中から弁当箱を取り出して、包んでいた新聞紙に汚れたパンツを丸めた。今日の授業に体育はないし、誰にもばれる事はないと安心してトイレをあとにしたのだが甘かった。
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