44人が本棚に入れています
本棚に追加
/126ページ
Ⅳ.五人の生贄(R18,R18G)
翌朝、建物の外に腰を下ろし寄りかかった状態で睡眠を取ったメロスが目を覚ますと、既にレギオンが鍋を火にかけておりそこに魚の干物やきのこを放り込んでいた。
どういうわけか彼は頭に頭巾を被さり、目元だけ出して顔を隠している。メロスは首を傾げた。昨夜の印象と何かが違うのだがうまく言葉に出来ない。
「…………んぐぅ…」
隣では体をくの字に曲げながら寝ているイオが転がっていた。
「起きたか」
「ああ。良い天気だな」
「そうだな。晴れている内に帰れ」
頭巾越しの籠もった声は昨日よりやや低く掠れていた。鍋の中身は昨夜と同じぐらい多い。
メロスがなかなか目を覚まさないイオを小突いた。
「イ…ロ…イア……ふぐっ! あ……あぁ…おはようふたりとも」
眼鏡を手探りで探しながらイオが体をおこす。良い天気だね、と空模様を確認して、既に革の鎧を身につけ始めたメロスを手招きした。
「もう一人の様子は?」
「おはようイオ。遠目で見た限り昨日と変わらないな……時々起きて藻掻く。死んでは居ない」
「……ちょっとおはようの挨拶してくるよ。僕は朝ごはん要らないからさ、先に食べててくれ」
イオは昨晩遅れて現れた男の元へと向った。大木に腰縄を結び付けて動ける範囲を制限し、視界を塞ぎ猿轡を噛まされた作業服の男。夜の間も藻掻いたのか足元の地面が抉れている。
イオは男の傍に膝を付き脈を確かめ、猿轡を解く。
「おはよう。僕の事わかりますぅ?」
目隠しは外さずに声をかけて男の返答を待った。できれば理性の有る返答が返ってくることを期待して、である。
最初のコメントを投稿しよう!