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『…違う』
レギオンは首を横に振ると主の衣を丁寧に剥がして、瘴気に侵されて火照る身体を風に当てる。不老不死の身体はどんなに傷付いても、毒や病に蝕まれても回復する。痛みや苦しみを感じながらも生き続ける。
その背面には黄金色の刻印が刻まれていた。
その刻印が機能して、瘴気や呪いが主の身体に取り込まれる。
『は……レギオ……』
しかし呪いに対して対抗策のない主は傷が開いたり、体中から血を流したり、高熱に苦しんだり、五感を失っていったり、身体の中からありえないものを吐き出したり、ひとりでに傷が腐ったり、恐ろしい幻覚や悪夢を見たりする。
レギオンと出会った頃には主の身体は既に瘴気で穢れた毒そのものだった。安易に犯して血や体液に触れたりすれば、昼間の連中のように死に至る。
『主』
その彼に唇を重ねる。
『これは、食事じゃない』
朦朧としつつある主にこんなことをするなんて、どんな卑怯者と言われようとかまわない。
自分の元から離れろだなんて言葉を、二度と主に言わせない。俺と同じ苦しみを憶えさせたい。
『…レギ…オ…』
『キス、と…いうんだ』
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