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寝室の片隅に、今も折れた剣がしまわれている。刃は毀れ、根本から折れて乾いた血がついた短剣だ。
血はすべて主のものである。
「ふー……」
レギオンが肌を重ねた代償として死ぬことは無かった。
しかし彼が外に出て水甕を覗き込めば其処には老いた己の顔が映り込んでいた。
レギオンは顔を上げ、森を抜けた先に聳え立つ切り立った山々を見上げた。あの山の何処かに、自分と同じ境遇だったのに生きる事が出来なかった四人が眠っている。
「今更すぎるな……敵を討つにも、百年前に挫けたし」
レギオンははるか昔に死の崖と呼ばれていた山に投げ捨てられた五人の孤児の中から唯一生き返った人間だった。
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