Ⅳ.五人の生贄(R18,R18G)

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「ノロイの王の血と肉食うとやっぱ死ぬんだなあ」 「そう簡単に人間が不死身になるわけねえよ。何考えてんだか」  足を持って引きずられながら、薄れゆく意識の中で「呪いの王」という名を聞いた。  そうしてごみのように宙に放り出され、切り立った崖を堕ちていき、他の子供や先に死んでいた大人たちとともに積み重なり、死んだ。  次に意識を取り戻した時、何かの中に閉じ込められていた。藻掻き、腕を突っ張るとベリベリと音を立てて外殻が割れていく。森の向こうから朝日が昇る中見た自分の手は酷く小さく丸みが有った。  ――彼は幼い彼自身として、彼の死体から生まれ変わった。  乾いた冷たい風。眼の前には朽ちた自分と思しき抜け殻。周りには乾いた死体が幾つもあった。 「う……ぁ…」  まず、自分の抜け殻から這い出すのに時間がかかった。周りは死体が幾つも積み重なっていて、下手に踏み込むとずぶりと足を取られてころんだ。  次にひどく腹が減っていた。死体棄て場に、食い物は棄てられていなかった。  一日中死体の山の中を四つん這いで這い周り、最初に目覚めた場所に戻った頃にはもう彼は人間ではなかった。  その魂が、獣に堕ちていた。  顔を覚えている四人を腹におさめた。 「う……あ――」  彼らの記憶と死に際の無念が獣に宿り、頭の中で反響する。  そうして百年よりもさらに遠い昔、死をくり返す呪いに囚われた獣が生まれた。
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