Ⅳ.五人の生贄(R18,R18G)

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 その前の晩、レギオンは百年踏みとどまり続けた一線を超えた。  直前に主に言われた言葉が、撤回させても尚レギオンの中で不安という名の魔物となり、主が来訪者へ向けた慈愛が自身を嫉妬の(けだもの)に貶める。  主の呪いをその身体に受け、魂を捧げた自分が唯一彼の傍に居続ける特別な存在である。其れがレギオンにとって矜持であり執着であった。  ――なのに、アイツらと一緒に行けって?  抱きしめた熱に苦しむ痩躯を寝台に寝かせて、覆い被さった。 『――俺は』  主の白い衣に広がる血。汗を浮かせ、疲労を浮かべた紫水晶の瞳が感情の凪いだ顔で獣を見上げている。  レギオンは自分が獣だと心の裡で心底嫌悪した。何故主は理解しないのかとまた怒りが燃え上がりそうだった。  同時にレギオンの人間性が「理解していないのはテメェ自身だ」とも冷たく詰る。 『アンタの……知らない、顔、みたい』
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