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「ちゃんと挨拶してくれよな」
息子は出かける前に釘を刺していった。気が重い。仕方なくリビングで待つことにした。
カチャンと音がして「こんにちは」と聞きなれない女の子の声がした。カミさんが慌てて玄関に出迎える。俺も仕方なく後ろから付いていく。
180センチを超えるガタいのいい息子の陰から小さな女の子が顔を出した。
「あの、お邪魔します」
可愛らしい子だった。正直ガサツな息子にはもったいないくらいの子だった。俺は適当に挨拶すると、あとはカミさんに任せた。カミさんはやたらテンションが高くて緊張しているようだった。
「孝くんもなんか言ってよ!」耳元で小声で言われて小突かれた。〈孝くん〉なんて呼ばれたのは十年ぶりだ。いつもは〈あなた〉なのに。よほどテンパっているに違いない。
二人はリビングに寄った後、息子の部屋に入っていった。私たち二人はぐったりと息を吐いたのは言うまでもない。
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