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「琴音」
「もう!! ものすごく心配したんだから!」
胸がいっぱいになり、私は病院だということも忘れて龍聖君に抱きつこうとした。
「あっ、ごめん! 傷、痛むよね」
触れる直前、私は咄嗟に体を離した。
「平気だよ、おいで」
龍聖君はリモコンでベッドを半分起こした。
私の方に、ゆっくりと近づく。
美しい目、鼻、口……傷ひとつ付いてないことに余計に泣けてくる。
「……私、龍聖君が死んでしまうんじゃないかって、不安で不安で」
「……悪かった。心配かけて」
「本当だよ。本当に……怖かったんだからね」
そう言うと、龍聖君は私の手にそっと触れた。
温かい……
この人はちゃんと生きている、そう感じた。
私は、すぐにその手を優しく両手で包みこんだ。
「何かとぶつかった後、意識を失うまでの時間……どれくらいだったんだろう。俺の頭の中に琴音が浮かんで……会いたいと強く思った」
龍聖君は、思い返すようにゆっくりと言葉を繋いだ。
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