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「卵スープ、ごま油が効いてて美味しい」
「そんなのわかるんだね」
「ああ、ごま油好きなんだ」
御曹司と言っても、龍聖君は庶民の味もわかるから有難い。
「冷麺いただきます」
龍聖君が半分食べた冷麺に、ゆっくりとお箸を伸ばす。
1口食べ、頑張って喉の奥に流し込んだ。
「どう?」
緊張して味がよくわからないのに、
「お、美味しいよ」
って……本当、嘘ばっかり。
でも、こんなやり取り、何だか照れる。
忙しい日々の中に、突然ポッと生まれた2人だけの大切な時間に、私はすごく感動してる。
ほんの少しでも龍聖君が楽しめるお手伝いができたなら、それが私の役目であり、私自身の幸せなんだと思った。
今日は一緒に食事ができて嬉しかったよ。
龍聖君の大事な時間を私に分けてくれて、心からありがとうって言いたい。
美味しい焼肉を堪能して、私達はマンションに向かって歩きだした。
「また来ような」
「うん」
何気ない会話が優しい。
龍聖君は、また……
私の手をそっと握ってくれた。
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