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「さ、教室に戻って帰りの会しなきゃね。挨拶しましょう」
「起立!」
学級委員の声に続き、椅子を引くガタガタッという聞き慣れた音。
この音楽室で、この音を聞くのもこれが最後。
「これで6時間目の授業を終わります。礼!」
「ありがとうございました!」
出入り口の前に子ども達が順番に並び、私はドアの前に片手を出してスタンバイする。
子ども達は私の手に片手ハイタッチをして、ドアから廊下へ出て行く。
笑顔で、パチン、と音を立てて行く子。
恥ずかしそうに控えめに撫でる程度に手を合わせて行く子。
悪戯っぽい笑みを浮かべ、まるでボールを叩き落とすくらいの勢いで強烈に叩いて行く子。これは男子に多い。翔や理貴はそのタイプだ。
「痛ぁ〜! 手、痺れるわ!」
私のその声に、してやったり顔を浮かべ廊下を走って行く。
「こらっ、廊下は……」
「走らなーーい!」
そう笑って言いながら、そのまま走って行く。
学校の『廊下を走るな問題』は、私が子どもの頃から、そして令和のこの時代になっても、なかなか解決できるものではない。
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