最後の授業

12/15
前へ
/15ページ
次へ
「どうした? 何かあった?」 「あのさ、(みどり)先生、ほんとに他の学校行っちゃうかも知れないの?」 「ん〜……さっきも言った通り、まだ分からないのよね」 「もしまだ居たとしても、おれらが6年生になって、先生が授業してくれるかは分かんないんだよね?」 「そうね……それも分からない」 「おれさ……もう先生に教えて貰えないかと思うと、泣けて来るんだ……」 急に顔を歪め、唇を噛み締めた翔の目から、涙がぽとりと床に落ちた。 「えっ? 翔……くん?」 「先生居なくなったら、おれ、また元に戻っちゃうかも知れない」 翔は肩を震わせながらも、涙を堪えようと、両手で乱暴に顔を拭う。 「翔くん、それは大丈夫だと思うよ。担任の先生から聞いたよ。 この前、また理貴くんと喧嘩になったけど、次の日ちゃんと謝ったんだって?」 「あ、うん。理貴が人気者なの、どうしてか分かったし、おれ、クラスで嫌われ者になるの嫌だと思ったから」 「それ、立派な事じゃない! さっき私が言った『想像力があれば争いは避けられる』それがちゃんとできてる。理貴くんの気持ちになって考えられたから、ちゃんと謝れたんだよね?」 「そうなのかな……。おれ、他のみんなにも迷惑かけた分、ちゃんとした6年生になりたい」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加