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4月、私は、他校に異動になった。
少し前から未知の感染症が大流行し、世界中がパニックに陥っていた。
春休みの間、新年度をどう迎えるべきか、教育関係者の間で議論が重ねられていた。
短い春休みの間では結論は出ず、新年度のクラス編成や担任発表、転入教員紹介の為、感染対策をした上での始業式。
担任と児童らは各々の教室で、放送室からテレビを通してのリモート始業式。
私も初めての学校で、児童達の顔を見る事なくカメラに向かって挨拶をした。
しかし、翌日から当分の間の休校の決定。
前代未聞の状況だが、未知のウィルスを前に対処法を持たない私達に為す術はない。
常勤教諭以外の、非常勤講師や支援員は自宅待機。
毎日報道される感染者数と死者数。
有名人の突然の死去のニュースが報道され、決して他人事ではないと恐怖に慄いた。
2か月が過ぎ、未だワクチンや薬も開発されず対処法も確立されないまま、6月から授業が再開される事となった。
授業の遅れは深刻な問題ではあるが、子ども達が集まる事によって、感染症が蔓延して取り返しのつかない事になりはしないだろうか。
そして、私自身も悩みを抱えていた。
私には幼少期から、呼吸器系の持病がある。
普段は普通に生活も運動もできるものの、急激な気温差、気圧の変化などで、たまに軽度の発作を起こす事があり、それでも薬や吸入で治る程度のものだった。
しかし3年前、大きな発作により酷い呼吸困難を起こし、10日間ほどの入院を余儀なくされた。
これをきっかけに予防治療を続け、小さな発作も出ないようにはなった。
しかし……完治した訳ではない。
未だ特効薬も開発されていないそのウィルスに罹ってしまったら、深刻な状態を引き起こす事態になりかねない。
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