最後の授業

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「先生! あのさ、この班になってから、みんな順番にいろんな役割果たして来たけど、まだ何もやってないの、(かける)だけだったんだよ。 だから、記録係やってくれって頼んだのにさ」 「お前がそう言うから、やっただろっ?! なのに字が下手とか文句ばっか言うからっ」 「下手なんて言ってないっ! 自動車工場の人に質問用紙渡すから、もう少し丁寧な字で書かないと読めないって……」 「下手って事だろ?! ならお前が書け! おれはもうやらない!」 国語や算数のように、一人ひとり黒板方向を向いて座る授業では、起こらないトラブル。 グループ学習では、他人と関わり意見を出し合うからこそ、揉めてしまう事も少なくはない。 些細なこと…… そんなに腹を立てることじゃ…… 何故、少し心を抑えて協力できないのか……。 大人からしたらそうだ。 しかし、身体も心もまだ未発達な小学生。 大人のように忖度をしない意見をぶつけ合い、自我を見つめ、成長していく時期なのだ。 それにしても、彼は…… 清水(しみず) (かける)は、昨今多くなりつつある『キレやすい子ども』なのは間違いない。 翔が倒れた椅子をもう一度蹴り、床を滑った椅子は、ロッカーに当たって止まる。 そして、教室後ろのドアを乱暴に開けると、廊下に出て行ってしまった。
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