最後の授業

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「翔くん、すぐ教室戻らなくていいから……。少し話そう」 「話? 先生、授業は……」 私が彼の身体から手を離すと、翔はやっと大人しくなり、私の目を見た。 「小嶋先生に任せて来た。今日はグループ学習だから大丈夫」 翔は私のその言葉に、踊り場の冷たい床に座り込んだまま、大きく息をした。 「どうした? 何が嫌だった?」 体育座りの膝に顔をつけて、翔は顔を上げない。 「字のこと言われたから?」 「あいつらみんな、おれなんか居ない方がいいと思ってる」 「誰かが、そう言ったの?」 「言われてないけどっ、そう思ってるに決まってる!」 「翔くんは、どうしてそう思うのかな」 「さっきのだって、理貴(りき)か女子が記録係やれば、綺麗な字で質問表書けたんだ。みんなそう思ってる。 なのに理貴は、字が下手って分かってて、おれにやらせた。それで文句言うなんて嫌がらせだろ!」 「なるほどね〜。翔くんはそう思っちゃったんだね。でも理貴くんは本当に嫌がらせでやったのかな」 翔は唇を噛み床を見つめる。 「うん、翔くんの気持ち分からなくはないよ。でも理貴くんは、翔くんをちゃんとグループの一員にしたかったんじゃないのかなぁ」 「……?」 「うん。グループの大切なメンバーってこと。 だって翔くんがこのまま役割を何もやらないで終わったとしたら、あのグループのメンバーで居なくてもいい存在になっちゃうでしょ? 理貴くんは、今回記録係を翔くんにやって貰う事で『』にしたかったんだと思うよ」
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