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「でもっ、おれの字のこと、バカにした!」
「翔くん、普段はもっと上手な字書くよね? 先生知ってるよ。
多分、今日のはちょっと嫌嫌やってたとこあるんじゃない? 字ってその時の気持ちが出るのよ」
「うん……おれに記録係やらせたの、理貴の嫌がらせだと思ったから……」
「そっか。あぁ〜良かった!」
「は?! 何が」
「話し合いってするもんだなぁ……って。お互い怒って話もしなかったら、『本当のこと』なんか分からないじゃない?」
「ほんとうのこと?」
「そう。今、私は翔くんと話して翔くんの本当の気持ちを知った。
だから、理貴くんとも話せば、分かり合えると思う。理貴くん、ここに呼ぶ?」
「はっ?! 先生、おれが言う事じゃないけど、今、授業中。
真面目にやってる理貴までここに呼ぶの?」
「ははっ。そういう気持ち持てるなら翔くん大丈夫だね!
うん、今日だけよ。
私だってこれから先、また翔くんが教室出てっても、毎回追い掛けたりしないからね。
授業できなくなるの困るし」
私は立ち上がり、翔に笑顔を向けると、3階への階段を上る。
目を見開いて面食らった表情をしていた翔は、私が階段を上り切って振り返ると、落ち着かない様子で首の後ろを搔いていた。
理貴が本当にどう考えていたのか分からない。
「あいつばっかり何もやらないでズルい」と思っただけかも知れない。
もしそうだとしても、理貴が翔のことを諦めなかったのには違いない。
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