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「あの……レンさん。冴場さんは……」
拳銃で撃たれたのだ。当然ながら病院に運び込まれ、手術を余儀なくされた彼の様態が、ずっと気になっていた。
対面に腰掛けたレンさんは、力なく首を横に振った。
「残念ながら、まだ昏睡状態だ」
「そうですか……」
気落ちして俯いたものの、すぐに顔を上げて礼を言う。
「ありがとうございます。お忙しい中、駆けつけてくださって」
「礼には及ばねえよ。忙しいのはみんな同じだ」
眉尻を下げつつも、小さく口角を上げたレンさん。その様子を見たらわかる。
私は今、さぞかし見ていられない顔をしているんだろうな。そう思った直後だった。
「誰より一番疲れてるのは、お嬢だろ。今日は帰って早く休めよ」
そんな言葉と共に、遠慮がちにポンポンと頭に触れた手。すると、その弾みでかポロリと涙が零れ落ちた。
一度溢れてしまうと、もう止まらなかった。後から後から止めどなく涙が頬を伝っていく。
「お、おい、お嬢……」
焦ったような声に我に返り、慌てて側のティッシュを引き抜いて目に押し当てる。
「すみませっ……。でも止まらなくて……」
鼻も口も全て覆って嗚咽を殺していると、椅子が回り、腕を引っ張られた。
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