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そして、許せないといえば――。
「私……犯人を絶対に許しません」
ジャケットの合わせを、両手できつく握り締める。
「あの人の命を狙ったこと、必ず後悔させます」
震える声で決意を口にした私に「そうだな」と、レンさんは応じた。
「必ず黒幕を挙げよう。俺たちの手で」
その言葉に頼もしさを感じると同時に、途方もない安堵が押し寄せ、私は今度こそ堰を切ったように泣き出した。
どれくらいそうしていただろうか。
しゃくり上げる声が収まったところで身体を離すと、私は恐る恐るレンさんの顔を見上げた。
「ん……。泣き止んだか」
こくんと頷く。
「どうだ、少しは落ち着いたか?」
また、こくんと頷く。
「そうか……良かった。――時にお嬢、今日は黒なんだな」
こくん――え? 何が?
規則正しい首振りを止めて、レンさんの顔に焦点を戻す。
彼は瞳に意味深な色を湛えていた。その無骨な人差し指がゆるりと持ち上がり、私の胸元を示す。
不思議に思いながら、その指先を辿ると――。
い――っ! シャツはだけとる! 誰だよはだけたの! ……私だよ。
「今度は百面相してどうした?」
レンさんの声で我に返り、慌ててワイシャツのボタンを閉め直す。
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