45人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、いつかは必ず真実に向き合わなければならないのだ。今受け止めるのは辛いだろうが、先延ばしにすればもっと辛い。
龍二は自らの過去を振り返ると、改めて決心を固めた。
――沙紀に事件の真相を伝えよう。
「レンさん、悪ぃけど、そこのリンゴ切ってくれねえか。この通り両手が塞がっちまってるもんでな」
所在なさげに頭を掻いている廉崎将己。その背に向かって、悪戯に呼びかける。
振り返った廉崎は、やれやれと肩を竦め、苦笑しながら側のテーブルに歩み寄った。
「……ったく、それくらい別にいいけどよ。――お嬢、アンタは一応、今職務中だってこと忘れるな」
「は、はいっ、ずびまぜん……」
テーブル上の箱からティッシュを大量に抜き取って顔に押し当てると、素早く恋人から離れて姿勢を正した沙紀。
その顔を見た二人は同時に噴き出す。
「ひっでえ顔!」
「早く洗ってこい。目元腫れちまうぞ」
小走りに病室を後にする沙紀を見送ると、龍二はここで初めて廉崎を真正面から見据えた。表情は、二人とも真顔だ。
「レンさん」
先に龍二が口を開いた。
「俺が今から話すこと、わかってるよな」
最初のコメントを投稿しよう!