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打たれた頬を押さえ、呆然とする私が捉えたのは、いつものようにギラギラ輝く瞳と、不敵に引き上げられた唇だった。
「く、くくっ……眼鏡っ子と心中……笑わせんじゃねえよ。いつも言ってるだろ? 俺の理想は、カップは最低Dあるナイスバディな美――」
全てを言い終わる前に、容赦なく彼の股間を蹴り上げた。
「一回出直してこい、このケダモノ!」
そして、吐き捨てた反動で勢いよく駆け出す。
ジャケットの懐に、絶えず忍び込ませている『ダサ眼鏡』を装着したら、不思議と力が漲ってくるような気がした。
彼を撃った犯人は、派手な赤シャツをはためかせて無防備に背を向けている。
「止まりなさい!」
赤シャツ男の足元目掛けて威嚇射撃するも、大人しく止まる気配はない。それどころか、男は無闇な発砲を繰り返した。
丁度、人気のない路地裏から、広い公園に出たところ。私は咄嗟に大きな桜の木に背を預ける。
乱れる息を整えながら、脳内で男が放った弾数をカウントする。――いや、対峙したとき彼も一発放ったはずだから、残るはあと一発のみか。
そう。今、男が持っているのは、彼の拳銃だ。
SAKURA M360J――通称『サクラ』。それは私たち警察官を象徴する物。
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