回想

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 それを勝手に使って……あの人の命を奪おうとするなんて、絶対に許さない!  息巻き、わざと(・・・)桜の木影から身を乗り出すと、案の定、男は容易く最後の一発を放ってくれた。  間一髪のところで銃弾を(かわ)し、地面を踏み切り軽く跳躍。首根っこを掴んで、その背を組み伏せた。 「あ"――っ! 痛い痛い痛い――っ!」  情けなく悲鳴を上げる男に対して、私は冷ややかに罪状を言い渡した。  ◇  走り去っていく相棒(恋人)の背を見送ると、冴場(さえば)龍二(りゅうじ)はガクリとその場に膝を折った。  蹴り上げられた股間はさておき、撃たれた背が焼けるように熱い。  ――こりゃあ……くたばるのも、時間の問題か……。  結局最期まで、刑事としても男としても、彼女を守り抜くことは出来なかった。後悔は拭えない。  為す術なく地面に突っ伏すと、脳裏では自然と彼女との思い出が再生された。  龍二が所属するのは、警視庁の組織犯罪対策部――通称『マル暴』。  暴力団などの組織犯罪、銃器や違法薬物の取り締まり……。扱う事件は、他のどの部署よりも物騒で危ないのではないかと思っている。  そんな常に気の抜けない血気盛んな男部署に、五年前配属されたのが、彼女――(たちばな)沙紀(さき)だった。  
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