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女にしては高身長だが痩せ型で、引っ詰め髪をした沙紀の最大の特徴が、あの超絶ダサい丸眼鏡だ。
彼女の相棒を言い渡された龍二は、よく『眼鏡っ子』と揶揄ったものだ。
所謂オタクが付けていそうな、牛乳瓶の底のように濁った眼鏡。
そんな見えにくそうなものを付けて、よく身軽に動けるなと感心したと同時に、呆れたものだ。
これでは男の影なんて、きっと皆無だろう。
今でこそ、セクハラだとか気をつけなければならないことが増えたが、当時はまだ線引きが曖昧だった。それ故かもしれない。
ある時、龍二は沙紀の素顔見たさに、ハプニングを装って眼鏡を奪った。
直後の驚きは今でも忘れられない。――素顔の彼女は、息をのむほど美しかったから。
何より、綾瀬はるかによく似ていた。要するに、龍二の好きな女のタイプ、そのものだったのだ。
そのキッと凛々しく睨む顔見たさに、何度も眼鏡を取り上げようとしては、容赦なく股間を蹴り上げられたものだ。
――……って、死ぬ間際に思い出すことがこれかよ!
回想から我に返り、虚しいセルフ突っ込みを放つ。
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